事象

標本空間から「知りたいこと」を切り出す

難易度 Lv 1 / 10想定時間:約10

できるようになること


標本空間は「メニュー」、事象は「注文」

標本空間の単元で、「起こりうるすべての結果」を並べた標本空間について学びました。しかし、標本空間を作っただけでは確率は計算できません。次に必要なのは、標本空間から知りたいことを切り出すことです。

数学の世界では、この「知りたい結果の集まり」のことを事象(event)と呼びます。

たとえるなら、

事象は標本空間の「部分集合」

少し数学的な表現をすると、事象は標本空間の部分集合と定義されます。 標本空間という大きな円の中にある「小さな円(部分集合)」が事象である、とイメージすると理解が深まります。

標本空間と事象のベン図

数学の言葉で表現する

ここまで標本空間・結果・事象という概念を学んできました。 これらの用語を数学的な表現で整理しておきます。

1. 標本空間

確率を考えるとき、まず「起こりうる結果を全部まとめたもの」を用意します。 これを標本空間といい、ふつう Ω\Omega(大文字オメガ)で表します。

例:サイコロを1回振る

Ω={1,2,3,4,5,6}\Omega = \{1, 2, 3, 4, 5, 6\}

2. 標本点(1回の試行で実際に起きた「結果」)

標本空間 Ω\Omega の中の、1つ1つの要素(結果)を標本点といいます。 標本点はふつう ω\omega(小文字オメガ)で表します。

ωΩ\omega \in \Omega

これは、ω\omegaΩ\Omega の1つの要素であることを数学的に表現したものです。

例:サイコロを1回振って「3」が出た場合、ω=3\omega = 3 と表します。

3. 事象(起きてほしい条件の集合)

事象は、標本空間の中から「条件に合う結果だけ」を集めたものです。 標本点という言葉を使って表現すると、条件を満たす標本点の集合といえます。

事象 AA は標本空間 Ω\Omega の部分集合として表され、AΩA \subseteq \Omega と書きます。 これは、AAΩ\Omega の部分集合であることを数学的に表現したものです。

例:サイコロを1回振って「偶数が出る」という事象は、

A={2,4,6}A = \{2, 4, 6\}

事象の例:条件を「集合」として書き換える

集合を使った表現に慣れるために、サイコロ1つ投げを題材に、いくつか事象の例を紹介します。

例1:「3以下が出る」

A={1,2,3}A = \{1, 2, 3\}

例2:「偶数が出る」

B={2,4,6}B = \{2, 4, 6\}

例3:「4以上が出る」

C={4,5,6}C = \{4, 5, 6\}

言葉のままだと曖昧になりやすい条件も、集合として書くことで「何を数えるか」がはっきりします。

「事象が起きる」とは何を意味するか

標本点 ω\omega が実際に起きたとき、それが事象 AA の中に入っていれば「事象 AA が起きた」といいます(ωA\omega \in A)。

例:事象 A={2,4,6}A = \{2, 4, 6\}(偶数)のとき、

標本空間が変わると事象も変わる

事象は標本空間の部分集合なので、条件が同じでも標本空間が変わると事象の書き方も変わります。

「偶数の目が出る」という同じ条件でも、

例1:出た目をそのまま結果とする場合

Ω={1,2,3,4,5,6}\Omega = \{1, 2, 3, 4, 5, 6\} 事象 AA(偶数が出る)={2,4,6}= \{2, 4, 6\}

例2:偶数か奇数かを結果とする場合

Ω={偶数,奇数}\Omega = \{\text{偶数}, \text{奇数}\} 事象 AA(偶数が出る)={偶数}= \{\text{偶数}\}

どんな Ω\Omega を採用するかで、事象 AA の書き方が変わります。

特別な事象

事象の中でも特別な名前がついているものを3つ紹介します。 (サイコロは1〜6の目が出る通常のものを想定しています。)

1. 根元事象

標本点1つからなる事象のこと。 例:サイコロを投げて1が出る。

2. 空事象

起こりえない事象のこと。記号 \emptyset で書きます。 例:サイコロを投げて7が出る。

3. 全事象

試行の結果、必ずどれかが起こる事象のこと。標本空間そのものです。 例:サイコロを投げて「1〜6のいずれか」が出る。

まとめ

事象とは、標本空間から知りたい結果を切り取った集合(=標本空間の部分集合)です。 言い換えると、条件を満たす結果の集まりともいえます。

事象が起きるとは、出た結果がその集合に入っていることを意味します。