標本空間

何を「1つの結果」とするかで、計算の難易度が変わる

難易度 Lv 2 / 10想定時間:約15

できるようになること


身近な問い:サイコロを2回振る

まずは、直感で答えてみてください。

問題
サイコロを2回振るとき、「出た目の合計が3以下である確率」は?
答えを見る
答え
3/36 = 1/12
解説
全部で36通りの結果があり、合計が3以下になるのは (1,1)(1,2)(2,1) の3通りです。等確率の標本空間なので 3÷36 = 1/12 となります。

Q1をどのように考えたか

どれも自然な考え方です。

まず全体を考える

確率を計算するためにまず何が起こりうるかはっきりさせる必要があります。 つまり、起こりうる結果を抜けもれなく数え上げることが、この後の確率計算の土台になります。 この全体を標本空間(sample space)と呼びます。

標本空間とは

試行:サイコロを2回振る 結果:(1回目, 2回目) の出目

として記録すると、起こりうる結果全体は次の36通りです。

↓ 1回目 \ 2回目 →
1
2
3
4
5
6
1
(1,1)
(1,2)
(1,3)
(1,4)
(1,5)
(1,6)
2
(2,1)
(2,2)
(2,3)
(2,4)
(2,5)
(2,6)
3
(3,1)
(3,2)
(3,3)
(3,4)
(3,5)
(3,6)
4
(4,1)
(4,2)
(4,3)
(4,4)
(4,5)
(4,6)
5
(5,1)
(5,2)
(5,3)
(5,4)
(5,5)
(5,6)
6
(6,1)
(6,2)
(6,3)
(6,4)
(6,5)
(6,6)
黄色のセルが「合計3以下」の組み合わせ(3通り / 36通り)

このような起こりうる結果全体のことが標本空間です。

「合計の値」を標本空間にするとどうなるか

「出た目の合計」は 2〜12 のいずれかになります。では {2, 3, …, 12} を標本空間として使ってよいのでしょうか。

結論から言えば、標本空間にしてもよいです。 ただし、そのまま「数える」と確率を間違えます。

たとえば、「合計7」になるのは (1,6)(2,5)(3,4)(4,3)(5,2)(6,1) の 6通り。 一方で「合計2」になるのは (1,1) の 1通りだけです。

{2, 3, …, 12} の各要素は等確率で起こるわけではないため、「12通りあるから各々1/12」という計算は成り立ちません。

注意

等確率でない要素を等確率として扱うと、確率の計算結果そのものが誤りになります。

01234561通り22通り33通り44通り55通り66通り75通り84通り93通り102通り111通り12
合計7が最も多い(6通り)。合計値ごとに出方の数が異なる

等確率の標本空間を選ぶ利点

(1回目の目, 2回目の目) を1つの結果とし、36通りを標本空間にすると、各要素はすべて等確率(1/36)で起こります。

等確率の標本空間では、確率の計算が「条件を満たす要素の個数 ÷ 全体の個数」で済みます。 逆に、等確率でない標本空間では、各要素の発生確率を個別に把握する必要があります。

Q1 の答えが 3/36 と出せたのも、この設計があるからです。

ポイント

この要素たちは等確率で起こるか?——これが標本空間設計の判断軸です。

よく見る標本空間のパターン

標本空間のパターンは大きく3つあります。まずはAを使えるようになればOKです。

分類特徴確率の求め方追加で必要な作業
A. 等確率全要素が同じ確率で起こる条件を満たす個数 ÷ 全体の個数なし(数えるだけ)
B. 非等確率要素ごとに起こりやすさが異なる各要素の確率を加算各要素の発生確率を求める
C. 無限結果が数え切れない級数・積分など無限和や積分の計算

A. 等確率(数え上げ=そのまま確率に直結)

例1:サイコロ1回
例2:サイコロ2回(順序あり)
ヒント

各要素がどれも同じ確率で起こりうるか確認しましょう。コインや公正なサイコロなら基本的にAです。

B. 非等確率(数えるだけだと計算できない)

例:サイコロ2個の合計
ヒント

要素を集約・まとめた場合はBになりやすいです。等確率に疑いがあればAに作り直しましょう。

C. 無限(起こりうる結果が終わらない)

例:表が出るまでコインを投げる

まとめ

標本空間とは、試行で起こりうる結果を抜けもれなく集めたものです。

標本空間を設計するときに最も重要なのは、「各要素が等確率で起こるか」という視点です。
等確率であれば、確率は「条件を満たす個数 ÷ 全体の個数」と数えるだけで求められます。
等確率でない要素を等確率として扱ってしまうと、確率の計算結果そのものが誤りになります。合計値のような「まとめた値」を標本空間にするときは、このリスクに特に注意してください。