期待値

確率分布から「平均的な値」を1つにまとめる

難易度 Lv 3 / 10想定時間:約20

できるようになること


確率で重みづけする

確率分布があると、「平均的にどれぐらいの値になりそうか」を1つの数で表したくなります。

サイコロを1回振って出た目を確率変数 XX とすると、確率分布は次のとおりです。

xx123456
P(X=x)P(X=x)1/61/61/61/61/61/6

この分布ではどの目も同じ確率なので、値を足して個数で割る計算でも「平均的な値」が出ます。

1+2+3+4+5+66=3.5\dfrac{1+2+3+4+5+6}{6} = 3.5

一方で、確率が均等ではない場合はどうでしょうか。次の分布を考えます。

xx123
P(X=x)P(X=x)1/21/31/6

このとき、値を足して個数で割るだけだと、各値の出やすさの違いが反映されません。

この違いを反映するためには、各値を確率で重みづけ する必要があります。 つまり、各値に確率を掛けて足し合わせます。これが期待値(expected value)の考え方です。

1×12+2×13+3×16=531.671 \times \dfrac{1}{2} + 2 \times \dfrac{1}{3} + 3 \times \dfrac{1}{6} = \dfrac{5}{3} \approx 1.67

期待値の定義

離散型確率変数 XX の期待値は、次で定義されます。

E[X]=すべての xxP(X=x)E[X] = \sum_{\text{すべての } x} x \cdot P(X=x)

連続型の場合は、和(\sum)が積分(\int)に置き換わります。

E[X]=xf(x)dxE[X] = \int_{-\infty}^{\infty} x \cdot f(x) \, dx

ここで f(x)f(x) は確率密度関数です。積分や連続型の詳しい説明は連続分布の単元で扱います。

どちらも「値×その値の起こりやすさを足し合わせる」 という考え方は同じです。

期待値の意味(長期的な平均)

期待値は、同じ試行を何度も繰り返したときの平均に対応します。

サイコロをたくさん振り続けると、出た目の平均は 3.5 に近づいていきます。 これは大数の法則として知られています。

期待値は 「1回の結果」ではありません。 サイコロでは 3.5 という目は出ませんが、たくさん振ったときの平均は 3.5 に近づきます。

計算例(支払額の平均)

ある契約の支払額(万円)を確率変数 XX で表します。 「支払なしが多いが、まれに大きく支払う」ような分布だとします。

支払額 xx(万円)0100500
P(X=x)P(X=x)0.900.080.02

E[X]=0×0.90+100×0.08+500×0.02=18(万円)E[X] = 0 \times 0.90 + 100 \times 0.08 + 500 \times 0.02 = 18 \text{(万円)}

この例では「平均すると18万円の支払いが発生する」となります。

期待値には単位が付きます。ここでは XX が「万円」なので、E[X]E[X] も「万円」です。

期待値の性質(よく使う2つ)

1. 定数倍と平行移動

aabb を定数とすると、次が成り立ちます。

E[aX+b]=aE[X]+bE[aX + b] = aE[X] + b

例えば E[X]=3.5E[X] = 3.5 なら、E[2X+1]=2×3.5+1=8E[2X+1] = 2 \times 3.5 + 1 = 8 です。 「値を2倍して1を足す」操作は、期待値にも同じように反映されます。

2. 線形性(和の期待値)

XXYY が確率変数のとき、独立である必要はなく、次が成り立ちます。

E[X+Y]=E[X]+E[Y]E[X + Y] = E[X] + E[Y]

例として、サイコロを2回振り1回目を XX、2回目を YY とすると、E[X+Y]=3.5+3.5=7E[X+Y] = 3.5 + 3.5 = 7 となります。

期待値とデータの平均の違い

期待値とデータの平均は似た概念ですが、計算の対象と計算方法が異なります。

項目期待値データの平均
対象確率分布(理論)観測データ(現実)
計算確率×値の和合計÷個数
サイコロの期待値は3.510回の平均は3.2などになり得る

まとめ

期待値 E[X]E[X] は、確率分布から計算する「確率で重み付けした平均」 です。 同じ試行を繰り返したときの平均に対応しますが、1回の結果そのものを指すわけではありません

よく使う2つの性質を確認してください。

E[aX+b]=aE[X]+bE[aX + b] = aE[X] + b

E[X+Y]=E[X]+E[Y]E[X + Y] = E[X] + E[Y]

これらの性質により、計算を分解・整理できる場面が多くあります。 また、期待値には単位が付くことにも注意してください。